オープンハウスのオプション 窓の断熱性能編
この記事は以下の記事とセットの内容となっています。
- 防火窓とは
- 標準仕様とオプション防火窓の断熱性能
- オプション防火窓の不都合な事実
- ちょうどいい塩梅のオプション仕様
- ガラスの「断熱タイプ」と「遮熱タイプ」
- その他の窓オプション
- オプション単価の目安
- 補足
- その他のオプション
防火窓とは
家を建てるとき、その土地が防火地域もしくは準防火地域ならば開口部つまり窓等を一定の遮炎性能を有するものにする必要があります。
法的には防火設備と呼ばれ、同様の性能の窓と扉を含めて「防火戸」と呼ばれます。
遮炎性能として20分間炎を遮るというものです。
詳しくは下記の記事を参照してください。
そしてこの防火戸が費用で問題になります。普通の窓に比べてとても高価なのです。そしてオプション費も高額になります。また、ガラスは網入りが標準となり見た目がよくありません。これを耐熱ガラスにすれば網無しになりますが、その費用もそこそこします。
ただしシャッター付きすると、シャッターが防火設備となるので窓は普通のものになります。とは言えシャッターもそこそこの値段ですので、コストダウンになるかというと微妙な感じです。安くなる事もあるようなので見積りして確認するのが一番かと考えます。
標準仕様とオプション防火窓の断熱性能
ホーク・ワンの窓の性能について、カタログには数値が書かれておらずどのくらいの差があるのは不明でした。そこでメーカーのカタログから熱貫流率を取り出してまとめました。
ちなみに、標準の窓がYKK APかLIXILかで少し変わります。とは言え、防火窓だとそこまで性能の差はありません。
私の場合はLIXILが標準仕様だったので、標準でFG-L、オプションでサーモスXでした。おそらく今ではTWになってると思うので、そちらも記載してます。また、参考にAPW330も記載しました。
補足事項がいくつかあります。まず、窓の種類についてです。引き違い窓(テラス)というのは、樹脂サッシのAPW330にしかない項目です。人が通る大きさの窓の事ですが、樹脂サッシでは強度の問題で構造が異なり断熱性能にも差が出るようです。複合サッシではそんなことないようです。横滑り窓の高所というのは、その名のとおり高所用窓のことです。オペレータとカムラッチというのは、ハンドル形状の違いです。
標準とオプションでは結構値が違います。しかし防火窓としてみると、複合サッシも樹脂サッシも大差はありません。人が通れるサイズの窓では、複合サッシのが断熱性が高いです。準防火地域の方は何が何でも樹脂サッシとする必要はないと思います。
さらに引き違い窓と縦すべり出し窓やFIX窓では、同じシリーズでも引違い窓の方が断熱性能が低いです。FIX窓を多用した方が、予算を抑えつつも断熱性能を高めることができます。
オプション防火窓の不都合な事実
ここで少しメーカーにとって不都合な事実があります。私も後で気がついたことです。標準仕様のFG-Lではペアガラスの空間が乾燥空気です。メーカーのカタログにはこれをアルゴンガスにするというオプションがあります。アルゴンガスにすると断熱性能が上がります。それを含めた表が下です。
どうでしょう。オプションのサーモスXなのに性能が悪い窓があります。また、オプションのTWと同値もあります。自分はコレを知らずにいたので、全ての窓をサーモスXにしました。ホーク・ワンやオープンハウス・ディベロップメントでアルゴンガス入りに変更できるか不明ですが、これから建てる方は営業に相談するのがありだと思います。ガスの変更はだいたい2000〜3000円が相場なので、ホーク・ワンとかでは倍の4000〜6000円程度で変更できると予想されます。サイズにもよりますが、窓のオプションは3〜5万円以上するのでアリだと思います。
幸いな事に我が家は、オペレータの縦滑り窓は2つのみです。というのも、断熱性を優先して縦滑り窓の多くをFIX窓に変更しました。
温暖地でも窓の熱還流率は最低でも1.9以下で、可能ならば1.6以下とするのが良いと考えます。理由としては、不快なコールドドラフトを抑えるには最低でもそれぐらいの性能が必要です。シングルガラスと比較してコールドドラフトを半分以下(風速)に抑えるには窓の熱還流率は1.6が必要となります。
ちょうどいい塩梅のオプション仕様
数値を見ても結局どうするのがいいのかとなると思うので、それも表にまとめました。前提条件として断熱材のオプションは付けます。費用と断熱レベルはあくまで目安なので、ご注意ください。
断熱材のオプションと引き違い窓のみオプションでも断熱等級5(ZEH)にギリギリ届きます。全ての窓をTWにすると、HEAT20 G1にギリギリ届くかも?というレベルです。
コスパを考えると、真ん中の引き違い窓はオプションのTW、それ以外の窓はオプションでアルゴンガスにするがちょうどいい塩梅になるかと思います。これで断熱等級5(ZEH)を十分に満たすことができるレベルです。繰り返しの注意ですが、家の形状や窓の数や大きさでUa値は大きく変わるため、あくまで目安です。
断熱を重視される方はTWのオペレータハンドルではなく、TWのカムラッチハンドルを選択するようにしてください。
ちなみに電気代は全ての窓をTWにして、年間で約15000円程度の削減です。ちょうどいい塩梅のTWとFG-Lアルゴンで約13000円程度の削減です。20年で26〜30万の削減となります。元を取るという事はできません。防火窓は高すぎです。
引違い防火窓はシャッター付きの方が安いらしい
ここでは計算を省略しましたが、更に断熱性能を上げたいという方はシャッター付き引き違い窓の採用を検討すると良いと思います。同じ引き違いでもシャッター付きの方が通常の窓になり性能が(0.2ぐらい)上がります。物によってはシャッター付きのが安いこともあるようです。私は後で知りました。営業さんから提案されなかった。。
ガラスの「断熱タイプ」と「遮熱タイプ」
ちなみに、Low-Eガラスには2種類あって「断熱タイプ(日射取得型)」と「遮熱タイプ(日射遮蔽型)」と言うのがあります。恐らく標準仕様だと遮熱タイプになります。
なんで2つあるのかと言うと、遮熱した方がいい場合と熱を取り入れた方がいい場合があるからです。例えば冬は太陽の熱を取り入れた方が暖房費が安くなります。
一般的には南に断熱タイプで、そのほかの方位は遮熱とするようです。しかしそれは、庇や軒で夏の強烈な日射が南側では遮られる場合です。都市部の庇や軒が無い家は、南側も遮熱タイプが良いと思います。その分、冬の日射所得は期待出来なくなりますが、、
オープンハウスで建てる方は性能より立地やデザイン優先な事が多いので、ガラスをどうするか特に聞かれませんでした。なので、標準だと一般的な遮蔽タイプになると思います。
ちなみに、庇や軒が無くとも日射を遮る方法はあります。世の中にはアウターシェードという便利な物があります。スタイリッシュな、すだれです。今から建てる方はこれも検討してみてはいかがでしょうか。ちなみに後付けもできます。
その他の窓オプション
断熱性能以外にも以下のようなオプションがあります
- シャッター付き
- 耐熱ガラス
- 防犯合わせガラス
我が家はどれも採用しませんでした。3階には台風対策でシャッターを付けようかと検討しましたが、妻が音がうるさくていらないという事で付けませんでした。
耐熱ガラスは網が無くなるのでリビングの窓にでも付けようかと思いましたが、妻がタダでさえ断熱でオプションが高いから不要という一言で付けない事に。ちなみに、シャッターをつけると網無しガラスになるので、今から考えると引き違いには全てシャッターを付けても良かったかなーと少し後悔しています。
防犯合わせガラスは、後付けでフィルムを貼れば問題ないことと修理費が高いという妻の意見で不採用になりました。
オプション単価の目安
オプション費の目安は以下のとおりです。ただし、21年10月頃の費用です。
- 引き違い(大:人が通る大きさ):10万
- 引き違い(中:腰高窓):6万
- 横滑り(高所):6万
- 縦滑り横滑りFIX(中):3.5万
- 縦滑り横滑りFIX(小):2.5万
- 標準窓アルゴンガス:4000〜6000円(予想)
- シャッター付き 不明
- 耐熱ガラス(網無し) 不明
- 防犯合わせガラス 不明
アルミやらガラスやら樹脂やらが高騰してるので、ここから2割以上の値上げになると思います。
補足
ここから先はマニアックな話になるので、読まなくても問題ありません。
上の数値を見るとわかりますが、FG-LとTWは同じラインナップとなっています。断面図を見ると部品等を共通化してるのがわかります。オペレータハンドルの窓は、ほぼ同じ構造です。TWのが樹脂の範囲が少し広い程度です。
対してサーモスXは構造が複雑で他のどの窓とも似ていません。専用設計という感じです。コストかかってるなぁというのが正直な感想です。樹脂サッシとの価格競争もあり、これは利益率悪いだろうなという印象を受けました。ラインナップからすぐ消えたのも少しわかります。
後継のTWは製造ラインの共通化などが考えられているなぁと思います。構造も単純になってます。FG-Lは数年前にリニューアルされたので、恐らく共通化とコストダウンの一貫と考えられます。TWはコストダウンと性能改善がされており、いい製品と感じます。
そのコストダウンの結果が、オペレータハンドルと高所用窓の性能ダウンかと思います。まあ、性能重視の方はカムラッチハンドルを選択するので、問題としなかったのだと思います。
それならばいっその事こと、TWのラインナップからオペレータハンドルと高所用は無くしても良かったのではと思います。
とは言え、FG-Lはサーマルブレイク構造ではないので、熱貫流率に差は無くとも結露等で差は出ると考えられます。
その他のオプション
その他のオプションへのリンクは以下の記事にまとめてあります。
オープンハウス標準仕様&オプション 断熱材編
この記事は以下の記事とセットの内容となっています。
断熱材の詳細仕様
ホーク・ワン(オープンハウス・ディベロップメント)のカタログには断熱材の詳細仕様が載ってません。なんか、とりあえず高性能とか書いてあるぐらいです。オプション費として25万円です。それだけの価値があるのでしょうか。当社比の高性能という評価はだいたい信用できません。
打ち合わせがある程度進んだ段階で仕様書をもらい、そこで初めて断熱材の詳細仕様がわかりました。それ以外にもいろいろと調べたので、今回まとめてみました。
標準仕様とオプションそれぞれの仕様が下の表です。
場所によって製品やら厚さが異なります。オプションにすると、より高性能な製品になって分厚くなってます。
断熱材の熱抵抗とUa値目安
でも、これだとどれくらい良いのかわかりません。そこでそれぞれの熱抵抗と断熱等級4の基準値、Ua値の目安を一つの表にまとめました。なお、この表には窓のオプションも含まれています。地域区分については、ここでは細かい説明を省きますが北海道が「1と2」で、東京が「6」に該当します。
まず、標準仕様でも断熱等級4(地域6)は満たしています。しかし、天井の熱抵抗が基準に比べて悪いので夏場の最上階は暑いと思います。
断熱材を強化(オプション)すると天井と床の熱抵抗が増えるので、夏場の最上階の快適性が向上するかと思われます。しかし、家全体の断熱性能はそこまで向上せず暖房費が5〜8%程度安くなる程度です。カタログには北海道とか寒冷地とか書いてありますが、北海道レベル(地域1・2)には断熱材の厚さが遠く及びません。北海道と同等とは書いてありませんが、この書き方は少し違和感があります。(そもそも北海道は断熱だけでなく気密性も高いのが一般的です。C値1.0以下なんて当たり前でC値0.5以下は普通レベルです。暖かさを論じるならば気密についても言及すべきです。)
ここに更に窓の多くをオプションにすると断熱等級5を満たすようになり、大分快適になると思います。暖房費は20〜30%の削減になります。
まとめ
以上より夏場の最上階の快適性か、窓もオプションにして断熱等級5にするかのどちらかが目的となり、それに25万円の価値を感じるかです。断熱材のオプションだけでは、電気代は年間で5000円安くなる程度です。20年で10万円ですね。元は取れませんが、断熱のオプションは他と違いキャッシュバックが発生します。そこをどう判断するかです。
また、試しに詳細な光熱費のシミュレーションをしてみました。こちらの記事も参考にどうぞ。
窓の断熱性能も大切!
断熱材だけでなく窓も大切です。むしろ窓の断熱性の方が大切です。窓の断熱性能については別に記事を書いたので、こちらもセットでお読みください。
個人的な意見
個人的には断熱のオプションは半分近くのキャッシュバックが発生するので、他のオプションと比べお得と感じています。快適性も向上しますのでアリです。ところで、上階ルーフバルコニーの天井と外気に触れる床はオプションを付けても変わりません。個人的には、ここも変わって欲しかったです。
その他のオプション
その他のオプションへのリンクは以下の記事にまとめてあります。
これ、いりますか?
ルームツアー動画を見ていて思うことがあります。
「これ、いるの?」
ものづくりをしているからか、これは本当に必要なのか?という視点を持ちながら家造りをしました。
特に狭小住宅なので、収納や動線を考えなければならなかったのも、大きかったと思います。
例えば…
脱衣所の窓、いりますか?
窓があると、外に人がいることがバレてしまいます。
換気については、風呂場の換気扇を回せば事足ります。
むしろ窓がない方が収納スペースを確保できます。
勝手口、いりますか?
広い家ならまだしも、狭小住宅で必要でしょうか?
ドアの設置にはお金がかかります。
無くすことでコスト削減になります。
リビングにたくさんの窓、いりますか?
窓があると収納棚の置き場が限定されます。
また、窓の断熱性能が悪いと、部屋全体の断熱が悪くなります。
窓の数が多いと、性能の良い窓にするときに金額が増えます。
ついているものだ、ついていて当然!
と考えるのではなく、
本当に必要なのか、自分は使うのか?
という視点を持つことが大切だと思います。
広いリビングをとるか、耐震性能をとるか
耐震等級に関する記事を多くの方に読んで頂いているようでありがとうございます。
今回は間取りと耐震性能について書きました。
少しでも参考になれば幸いです。
広いリビングに憧れる施主
ブログやルームツアー動画で、多くの施主様が広いリビングに憧れているのを感じます。
確かに、せっかくなら広々としたリビング空間でくつろぎたいですよね。
でも、広いリビングと引き換えに、失うものがあります。
耐震性能です。
ホームインスペクターや、建築士さんのユーチューバーの中には、もろい建物かを判別する材料として、20畳以上の広い部屋があるかどうかがあると言っています。
広い部屋は、柱が少く、かつ壁も少ないので、耐震性能は下ります。
特に平屋ではなく、2階以上かつ、下の階に広い部屋があると、より地震に対してもろくなります。
平屋で、間取りを考える前に、耐震をとるか、広さをとるか、施主ははっきり決めておく必要があります。
耐震性能と部屋の広さ
鉄骨のハウスメーカーの営業さんから、「うちは鉄骨なので20畳以上の広いリビングにしても耐震性に問題なく、大きな窓もたくさん設置できますよ」と言われたことがあります。
おそらく、業界的にも20畳のリビングが耐震性能確保の一つの目安になっているのかもしれませんね。
なお、耐震性能を語る上で必要な用語があります。
①耐力壁
いわるゆる筋交いと面材のこと。
地震など、横の揺れに対して強くするために必要なものです。
耐力壁のバランスも良くないとだめです。4四方の内の一箇所だけ耐力壁が多くても、他の三方が少なかったら耐震性能は上がりません。
②直下率
柱と梁の位置のバランスのこと。
直下率が高いほうが耐震性能が高いです。
③耐震等級
地震に対する建物の強度を示す指標のひとつです。
建物の耐震性能によってランクが3段階に分かれていますが、計算ルートで実際の強度が異なることもあり注意です。
そもそも20畳は本当に狭い?
人によっては、20畳でも狭い!と感じる方もいるそうです。
広さの感覚は人それぞれなのでなんとも言えませんが、やはり物の置き方、部屋の形によって感覚は変わると思います。
真四角、長方形、コの字型、L字型、、、
下の図形は全て面積が同程度(20畳)です。
家具の配置や種類に気をつければ、特段狭すぎる!!と感じることはないとは思います。
木造で大空間や吹き抜けを実現したいなら構造計算を推奨
耐震等級には2種類の計算方法がある
やはり木造で大空間や大きい吹き抜けをしたい、そして耐震性能も高くしたいとなるなら性能表示による計算よりも構造計算が推奨です。構造計算にすることで、ここの壁が必要とかあっちの壁をなくしてもこっちの壁を強化すれば耐震性能は十分といったことが確認できます。また、設計者による耐震性能のバラつきも少なくすることができます。
- 住宅性能表示による壁量計算 品確法
- 構造計算(許容応力度計算) 建築基準法
制振か耐震か
じゃあ制震はというと、耐震性能の次になります。まず構造を強化した上で、予算に余裕をがあれば制震がいいと思います。具体的には、耐震等級2以上が良いと思います。
耐震等級1に制震を付けても効果があるんじゃないのと思われるかもしれませんが、現段階では専門家でも意見が分かれています。効果があっても、それは耐震等級2に相当するのか等級3に相当するのか不明です。更に制震システムは多くの種類があり一概に言えないというのもあるようです。
個人的に今一番興味があるのは「制震テープ」です。
木造ではなく鉄骨や鉄筋コンクリート造を検討しては?
もし、耐震性能も確保しつつ20畳を超える大空間がほしい方は、木造以外の建築材を検討したり、平屋を検討するのが最適かと思います。
ちなみに、特に最近は太陽光発電をつける施主様も増えていると聞きます。
太陽光発電パネルはかなりの重量物で、耐震性能を下げる要因にもなります。
そのため、ガルバリウム鋼板のような軽い屋根ではなく、重い瓦やスレート屋根にしてしまうと、ますます木造での耐震性能は悪くなります。
関連記事
ローコスト住宅で求める気密性能は
気密を取る理由と目的
断熱性と省エネ
気密性が悪いと、いくら断熱材を良くしてもスカスカなので意味ありません。
特に冬場で室内と室外の温度差があると隙間からの自然換気が増し、更に冷たい空気は足元に貯まるので体感温度を下げます。そうなると部屋の上から空気を暖めるエアコンは不利になります。省エネの観点からも良くありません。
とは言え、温暖地の断熱等級4程度では気密よりも断熱材が少ないことによる熱損失の方が多いため、まずは断熱等級5以上を目指すのが良いと考えます。断熱等級5を満たしてから気密を高めるで良いでしょう。じゃあいくつが良いのかとなりますが、漏気から気密を考えてみます。
参考にUa値とC値から暖房負荷を計算した表を下に示します。注意点としては、Ua値0.87とC値1.0の時の暖房負荷を1として、それからの削減率を表しています。詳しくは下記の記事を参照してください。
海外では漏気量で気密性を規定しているので参考にできそうです。というか、その方が目的がしっかりしていて合理的ですね。よく言われるC値1.0以下の根拠はカナダのR-2000だと思われます。これは、50Pa(風速30m/sを想定)で漏気が1.5回/hという基準です。風速30mって日本の寒冷地ならば吹雪などありますが、温暖地では木枯らしと台風の時ぐらいでしょう。木枯らしでも瞬間最大風速は20m/sです。台風は無視してよいでしょう。
そう考えると、寒冷地ではカナダのR-2000である50Paで1.5回/hとなるC値1.0が最低基準として適当でしょう。しかし温暖地であれば、倍となるC値2.0が最低基準としては十分ではないでしょうか。これは、旧省エネ基準の寒冷地の値、もしくは30年前のスウェーデン建築基準と同じ値です。
ちなみに海外でもアメリカやフランスなどの温暖地であれば基準はC値1.8程度です。
換気計画
換気を計画通りにするという目的もあります。ローコスト住宅の殆どで採用されている3種換気では、一般的に換気が計画通りにできるのがC値1以下と言われています。
とは言えローコスト住宅でC値1.0以下にするのは難しいかと考えます。そもそも3種換気は高気密の平屋でないと厳しいです。冬の2階建てや3階建てでは温度差と高低差による流量減や逆流の問題が発生します。そして上階を計画値の8割程度に換気するには、C値1.0どころか0.5以下が必要になります。
それ以上の問題として、日本の狭い住宅事情で6〜8帖の部屋で家族や夫婦で寝ることでは無いかと考えます。人間1人に必要な換気量は10帖の部屋の0.5回/hと同等です。6帖の部屋に1人でも換気量は足りてないのに2人以上となると、二酸化炭素濃度はとても高くなります。これはC値が小さく、計画通りに換気できていても発生する問題です。
以上より、いろいろと考えましたが換気計画に関してはローコスト住宅の気密レベル(C値2~3程度)で3種換気という条件では難しいと考えました。施主が家族の健康を守るという意識を持ち、寝室の二酸化炭素濃度をロギングして改善するしかありません。対策としては、住んでから3種換気の自然式給気口を自分で1種換気の機械式給気口に変えるしか思い付きませんでした。
もしローコスト住宅で1種換気が選択できるならマストです。その場合、必要なC値は2〜3でも十分です。1種換気の場合、C値が2~3程度だと冬に換気過剰となり0.9回/h以上となります。省エネとしては悪くなりますが、二酸化炭素濃度は改善されます。冬に計画値になるべく近く(0.6回/h程度)するには、C値は0.5以下が推奨です。もしくは、機械換気量を0.2~0.3回/hに減らすことです。
補足
上記より、平屋以外であれば1種換気だろうと3種換気だろうと真冬に換気計画の±20%を満たすにはC値は0.5以下が推奨です。例えばこれを±40%でもよいのであればC値は1.0でも良いですし、逆に±10%にするならC値は0.25となります。ネットには「〇〇という条件を満たすには、C値は〇〇以下を推奨」の「〇〇という条件」というのを省略して「C値は〇〇以下推奨」というパターンが多すぎです。
ちなみに年間平均であれば、C値1.0で計画換気の±20%となるのでこれでも良い気がします。
内部結露などの劣化防止
これは実際の物件を調査したものがありました。北海道での調査ですが、結露などの条件としては厳しくなるので問題ないかと思います。
その結果からは、2.0以下であれば築20年でも目立った劣化はなく、3.5以上では壁や開口部に黒ずみが目立ったとのこと。
この調査からみると、2.0程度あれば十分ではないでしょうか。
また、ここでは気密だけでなく気流止めの重要性についても言及されています。
北海道における木造高断熱住宅の断熱性能の劣化に関する研究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aije/84/764/84_911/_pdf
ローコスト住宅ではC値2以下を目指す
以上より個人的にはローコスト住宅に求める気密性はC値2以下が妥当と考えます。これは国内だと旧省エネ基準の寒冷地や、2005年の北方型住宅基準と同じです。海外だと30年前のスウェーデンの基準や、フランスの基準とほぼ同じです。せやま基準では「少し不足」に分類されます。
ただし、建築後の劣化を考慮すると新築時に1.5程度になるのでしょうか。お金があって気密に拘ることができるのであれば、劣化なども考え新築時はせやま基準の0.7以下が好ましいと考えます。ちなみにこれは温暖地での話です。
寒冷地であれば北方型住宅の基準である1.0程度が最低基準でしょうか。劣化を考慮すると新築時は0.7ですかね。気密に拘るならば0.5で、劣化を考慮して新築時0.2~0.3程度でしょうか。ちなみに0.5は北方型住宅のトップランナーレベルです。0.2はかなり難しい値な気もしますが、札幌での調査だと結構満たしてる家が多いんですよね。これにはビックリしました。
一つ注意すべきなのは気密性は目的ではなく、漏気を抑える手段です。最近の家垢を見てると気密が目的になってるように見えますが。過剰な気密競争になっているように見受けられます。
換気と二酸化炭素濃度の問題
後は換気の問題がありますが、計画換気ができないからといって窒息するとかシックハウスがとか煽るつもりはありません。ここはローコスト住宅の限界ですね。建売住宅の限界でもあります
シックハウスならば、現在は建材レベルで対策されています。二酸化炭素濃度の対策は上で述べた給気口の交換以外にももっと簡単な方法があります。それは、部屋の扉を閉めないことです。これである程度の換気が発生します。しかしそれでも換気量が足りない時間帯が発生することはあります。とは言え一時的なものです。一日中、ずっと換気されないというのは考えにくいです。
一つ気を付けて欲しいのは、6帖の部屋に一人以上居れば換気は足りていません。これは気密が高くとも関係ありません。建築基準法の0.5回/hはあくまで、シックハウス対策です。二酸化炭素濃度ではありません。
必要な換気量は何帖に何人で寝るかという家族構成や間取り、生活スタイルで変わります。そのため、施主が住んだ後で二酸化炭素濃度を測り改善するしかありません。
この記事を書いていて思うのは、やはり外気温等の環境や現場の施工レベルに左右されずに計画換気ができる1種換気がいいなぁということです。10年経ったらロスナイにリフォームするのがありかもしれません。ロスナイの取り付けにはφ120の穴が必要なので、自然給気口のφ100はそのままでは利用できないのがネックですが。。
【計算してみた】気密は断熱性能にどこまで影響するのか
暖房負荷計算のきっかけ
気密の差がどれくらいの断熱性能となって表れるのか、あまり情報がありませんでした。あったとしても、C値5.0と1.0の比較ぐらいです。
別件で、せやま基準のエアコン容量早見表を見ていてあることに気がつきました。これを逆数にすれば気密性能を含めた暖房負荷の比が求まります。
暖房負荷とは逃げる熱量なので、それが断熱性能の目安になります。暖房負荷なのでWで出すこともできますがそれだと部屋の大きさによるので、地域6の断熱等級4とC値5.0を「1」とした場合の表を作成してみました。
せやま基準のエアコン容量早見表の根拠は何か
せやま基準って、瀬山さん独自の基準ってほぼ無いんですよね。それぞれの評価項目は既にある国や業界の基準を使っています。なので、どちらかというと「せやま仕様」ですよね。
エアコン容量早見表もそうです。これも、エコ住宅の研究や設計をされている著名な方の計算方法を参照しています。以下の二つがそれです。
これで算出される暖房負荷計算は伝導のみで、日射取得や低気密による対流などは考慮されていません。あくまで目安ということを注意してください。
省エネ基準からの暖房負荷削減率
C値1.0=0.1回/hと計算(年間を通しての平均)
C値1.0につき0.1回/hの漏気が発生するとした場合の暖房負荷を計算したものが下の表です。元々の計算式で既にそうなっており、特にいじったりはしていません。
今時、C値が5.0の新築はなかなかないと思いますが、旧省エネ温暖地での値ですのでこちらを基準としてみました。
断熱等級4とHEAT20 G3だと暖房負荷が6割程度も削減されています。ZEHレベルにするだけでも3割は削減できます。断熱は大事ですね。
次に気密の影響として、断熱等級4のC値5.0と0.5を比較すると14%程度違いますが、現実的に2.0と0.5だと5%程度の差しかありません。気密より断熱をまず優先した方がいいことがわかります。
HEAT20 G2ぐらいになると2.0と0.5の差は、(0.56-0.51)/0.56*100=9%となるので気密の重要性が増します。高断熱の次は高気密という順番になりますね。
C値1.0=0.2回/hと計算(東京の真冬を想定)
さて、東京の真冬での温度差と最大風速を考慮するとC値1.0につき0.2h回/hの漏気が発生するので、こちらの条件で計算もしてみました。下の表がそれです。
さすがに、漏気による熱損失が倍になるので気密による影響が大きいです。とは言え、「ZEHやHEAT20 G1のC値2.0」と「断熱等級4のC値0.2」では前者の方が暖房負荷は一割近く少ないので、やはりまずはZEHレベルまで断熱を高めるのが最適解かと考えます。しかし、「HEAT20 G2のC値2.0」と「HEAT20 G1のC値0.7」が同じ暖房負荷となっています。断熱を1ランク上げたらの次は気密を1ランク上げて、その次は断熱を上げるというサイクルが良さそうです。
※「ZEHやHEAT20 G1のC値5.0」と「断熱等級4のC値1.0」では暖房負荷が同じですが、この組み合わせは比較材料として除外して問題ないでしょう。どちらの条件も考えにくく、例とするにしても適切ではありません。
1種換気と3種換気での比較
C値による漏気も計算に入っているという事は、換気システムの違いによる差も計算できます。
断熱等級4のC値1.0で3種換気での暖房負荷を1としました。3種換気の0.5回/hによる熱損失はC値5.0と同等です。
1種換気の熱回収率80%による熱損失はC値1.0と同等(0.5回/hの熱損失が0.1回/hまで抑えられます)です。そこにC値1.0の漏気を加えるとすると、C値2.0が1種換気での熱損失になります。それで比較した表が下の物です。
これを見ると、「1種換気のG1」は「3種換気のG2」と暖房負荷が同じです。なんか、気密より換気システムのが効果が高いように感じます。ちなみにこれは暖房負荷のエネルギー量なので換気システムの電気代は含んでいません。
室内の温度を一定に保つという点では、やはり1種換気のがよく、その効果は断熱レベルを1ランクあげるのに相当しそうです。
電気代で断熱性能を上げてるとも言い換えられます。
結論:気密より換気システム
気密性より換気システムのが断熱性能に影響を与えるということがわかりました。
上記の内容を踏まえると温暖地ならば付加断熱のいらないHEAT20 G1程度で1種換気のC値はそこそこの1.0程度あれば実用上は十分ではないでしょうか。
あれ?これってせやま基準と同じですね。
ダイケン ルームアートとトリニティの耐久性
我が家のフローリング仕様
1F玄関ホールと2FのLDKにダイケン トリニティを採用しました。その他の部分は全て標準仕様のダイケン ルームアートにしました。
オプションのトリニティを採用した理由は以下の記事にも書きましたが、耐久性の向上です。標準仕様のフローリングではフチや溝に汚れが溜まるだけでなく、そこから化粧シートが剥がれます。トリニティではシートがフチまで続いているので剥がれるのを防ぎます。
実際、どれほどの効果があるのか不明でしたがネットでいろいろと調べていたらちょうど良いブログがあったので紹介します。
フローリングの耐久性
こちらのブログの方は、我が家とおなじでトリニティとルームアートを採用されたようです。
ダイケン ルームアート
5年でシートの溝やフチから剥がれが発生したようです。やはり、シートの溝加工の部分が弱点のようですね。クイックルワイパーの水拭き等で剥がれたとのことです。
ダイケン トリニティ
5年で目立つ劣化はないようです。ただデメリットとして、意外と溝に汚れが溜まるとのことです。掃除機をかけたら取れるが、溝を丁寧に掃除したら汚れていたとのこと。
劣化対策
ルームアートは5年程度で表面の化粧シートが剥がれるらしいので、自分なりに対策を考えました。せめて10年ぐらいは剥がれて欲しくないなと考えてます。
フロアコーティング
フローリングの劣化対策として、入居前にフロアコーティングをするというのがあります。フロアコーティングにもいろいろと種類があり耐久性とコストが異なるます。代表的なフロアコーティングの耐久性と費用は以下のとおりです。
- UVコーティング 20年以上 4000円以上/m^2
- シリコンコーティング 10~20年 3000円/m^2
- ウレタンコーティング 5~10年 2000円/m^2
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とは言え費用はそこそこします。標準仕様の安い床材にわざわざフロアコーティングを掛けるかというと微妙です。安めのウレタンコーティングでさえ24帖で8万円です。もっと安いフロアコーティングもありますが、それは耐久性が5年以下となりワックスと比較しても微妙なラインです。
ワックス
シートフローリングはワックス不要ですが、劣化対策としてワックスをかけるというのはありだと思います。通常のワックスは半年ぐらいですが、耐久性の高いものは2年持ちます。入居時に寿命が2年ぐらいのワックスをかけるのはアリではないでしょうか。コストも比較的安いです。
いっそのこと全てトリニティ
個人的にやってみたかった解決策です。全ての床をトリニティにしてしまうことです。ホーク・ワンでは1.2万円/坪ですが、ハウスメーカーによっては6千円/坪なのでアリだと思います。1坪は3.3m^2なので、費用としてはホーク・ワンの場合でもUVコーティングと変わりません。UVコーティングの膜厚は30μmなので、汚れや引っ掻きキズぐらいは防ぎますが物を落とした時の凹みやキズは防ぐことができません。基本的にシートフローリングの化粧シートがコーティングの膜より薄いのは考えにくいので、汚れやキズを防ぐ機能は変わらないかと考えます。
硬度Hが違うという話もありますが、9Hの膜でも砂などが少しある状態でルンバが上を通れば傷つきます。なので、硬度の差は目安であって実生活では差を実感しにくいと思います。
どんな場所が劣化しやすい?
家のフローリング全面が同時に劣化するということはありません。必ず偏りがあります。築20年の実家のフローリングが顕著で、以下の場所の劣化が激しかったです。
フローリングのリフォームから10年ぐらい経ちます。以外にも玄関へのルートは綺麗でした。人がよく通る場所が劣化しやすいわけですが、玄関は外に行く時にしか通らないのでそこまで劣化しないわけですね。そうなると、過ごす時間が多いLDKや1日に一人当たり複数回は使用するであろうトイレへの動線が劣化するということです。ようは通路ですね。こういう所はワックスを念入りにするといいかもしれません。
ちなみに水回りはクッションフロアなので劣化を確認できませんでした。しかし安いクッションフロアでも20年は持つことは確認できました。やはり、水回りはクッションフロアがいいですね。
ホーク・ワンではクッションフロアを選択できないのが残念です。