よわよわ理系 家を建てる

ホーク・ワンで建てるセミ注文住宅 -埼玉で3階建て狭小ローコスト住宅-

ローコスト住宅で求める気密性能は

 

 

気密を取る理由と目的

断熱性と省エネ

気密性が悪いと、いくら断熱材を良くしてもスカスカなので意味ありません。

特に冬場で室内と室外の温度差があると隙間からの自然換気が増し、更に冷たい空気は足元に貯まるので体感温度を下げます。そうなると部屋の上から空気を暖めるエアコンは不利になります。省エネの観点からも良くありません。

とは言え、温暖地の断熱等級4程度では気密よりも断熱材が少ないことによる熱損失の方が多いため、まずは断熱等級5以上を目指すのが良いと考えます。断熱等級5を満たしてから気密を高めるで良いでしょう。じゃあいくつが良いのかとなりますが、漏気から気密を考えてみます。

参考にUa値とC値から暖房負荷を計算した表を下に示します。注意点としては、Ua値0.87とC値1.0の時の暖房負荷を1として、それからの削減率を表しています。詳しくは下記の記事を参照してください。

暖房エネルギー消費量 Ua0.87とC5.0を1とした場合

 

e-tonbo.hatenablog.jp

 

海外では漏気量で気密性を規定しているので参考にできそうです。というか、その方が目的がしっかりしていて合理的ですね。よく言われるC値1.0以下の根拠はカナダのR-2000だと思われます。これは、50Pa(風速30m/sを想定)で漏気が1.5回/hという基準です。風速30mって日本の寒冷地ならば吹雪などありますが、温暖地では木枯らしと台風の時ぐらいでしょう。木枯らしでも瞬間最大風速は20m/sです。台風は無視してよいでしょう。

chiba-kenchiku.net

そう考えると、寒冷地ではカナダのR-2000である50Paで1.5回/hとなるC値1.0が最低基準として適当でしょう。しかし温暖地であれば、倍となるC値2.0が最低基準としては十分ではないでしょうか。これは、旧省エネ基準の寒冷地の値、もしくは30年前のスウェーデン建築基準と同じ値です。

ちなみに海外でもアメリカやフランスなどの温暖地であれば基準はC値1.8程度です。

 

e-tonbo.hatenablog.jp

 

換気計画

換気を計画通りにするという目的もあります。ローコスト住宅の殆どで採用されている3種換気では、一般的に換気が計画通りにできるのがC値1以下と言われています。

とは言えローコスト住宅でC値1.0以下にするのは難しいかと考えます。そもそも3種換気は高気密の平屋でないと厳しいです。冬の2階建てや3階建てでは温度差と高低差による流量減や逆流の問題が発生します。そして上階を計画値の8割程度に換気するには、C値1.0どころか0.5以下が必要になります。

出典:Panasonic 自然給気口(第3種換気機種)の性質

sumai.panasonic.jp

それ以上の問題として、日本の狭い住宅事情で6〜8帖の部屋で家族や夫婦で寝ることでは無いかと考えます。人間1人に必要な換気量は10帖の部屋の0.5回/hと同等です。6帖の部屋に1人でも換気量は足りてないのに2人以上となると、二酸化炭素濃度はとても高くなります。これはC値が小さく、計画通りに換気できていても発生する問題です。

news.mynavi.jp

以上より、いろいろと考えましたが換気計画に関してはローコスト住宅の気密レベル(C値2~3程度)で3種換気という条件では難しいと考えました。施主が家族の健康を守るという意識を持ち、寝室の二酸化炭素濃度をロギングして改善するしかありません。対策としては、住んでから3種換気の自然式給気口を自分で1種換気の機械式給気口に変えるしか思い付きませんでした。

もしローコスト住宅で1種換気が選択できるならマストです。その場合、必要なC値は2〜3でも十分です。1種換気の場合、C値が2~3程度だと冬に換気過剰となり0.9回/h以上となります。省エネとしては悪くなりますが、二酸化炭素濃度は改善されます。冬に計画値になるべく近く(0.6回/h程度)するには、C値は0.5以下が推奨です。もしくは、機械換気量を0.2~0.3回/hに減らすことです。

補足

上記より、平屋以外であれば1種換気だろうと3種換気だろうと真冬に換気計画の±20%を満たすにはC値は0.5以下が推奨です。例えばこれを±40%でもよいのであればC値は1.0でも良いですし、逆に±10%にするならC値は0.25となります。ネットには「〇〇という条件を満たすには、C値は〇〇以下を推奨」の「〇〇という条件」というのを省略して「C値は〇〇以下推奨」というパターンが多すぎです。

ちなみに年間平均であれば、C値1.0で計画換気の±20%となるのでこれでも良い気がします。

内部結露などの劣化防止

これは実際の物件を調査したものがありました。北海道での調査ですが、結露などの条件としては厳しくなるので問題ないかと思います。
その結果からは、2.0以下であれば築20年でも目立った劣化はなく、3.5以上では壁や開口部に黒ずみが目立ったとのこと。
この調査からみると、2.0程度あれば十分ではないでしょうか。

また、ここでは気密だけでなく気流止めの重要性についても言及されています。

 

北海道における木造高断熱住宅の断熱性能の劣化に関する研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/aije/84/764/84_911/_pdf

ローコスト住宅ではC値2以下を目指す

以上より個人的にはローコスト住宅に求める気密性はC値2以下が妥当と考えます。これは国内だと旧省エネ基準の寒冷地や、2005年の北方型住宅基準と同じです。海外だと30年前のスウェーデンの基準や、フランスの基準とほぼ同じです。せやま基準では「少し不足」に分類されます。

ただし、建築後の劣化を考慮すると新築時に1.5程度になるのでしょうか。お金があって気密に拘ることができるのであれば、劣化なども考え新築時はせやま基準の0.7以下が好ましいと考えます。ちなみにこれは温暖地での話です。

寒冷地であれば北方型住宅の基準である1.0程度が最低基準でしょうか。劣化を考慮すると新築時は0.7ですかね。気密に拘るならば0.5で、劣化を考慮して新築時0.2~0.3程度でしょうか。ちなみに0.5は北方型住宅のトップランナーレベルです。0.2はかなり難しい値な気もしますが、札幌での調査だと結構満たしてる家が多いんですよね。これにはビックリしました。

一つ注意すべきなのは気密性は目的ではなく、漏気を抑える手段です。最近の家垢を見てると気密が目的になってるように見えますが。過剰な気密競争になっているように見受けられます。

 

換気と二酸化炭素濃度の問題

後は換気の問題がありますが、計画換気ができないからといって窒息するとかシックハウスがとか煽るつもりはありません。ここはローコスト住宅の限界ですね。建売住宅の限界でもあります

シックハウスならば、現在は建材レベルで対策されています。二酸化炭素濃度の対策は上で述べた給気口の交換以外にももっと簡単な方法があります。それは、部屋の扉を閉めないことです。これである程度の換気が発生します。しかしそれでも換気量が足りない時間帯が発生することはあります。とは言え一時的なものです。一日中、ずっと換気されないというのは考えにくいです。

一つ気を付けて欲しいのは、6帖の部屋に一人以上居れば換気は足りていません。これは気密が高くとも関係ありません。建築基準法の0.5回/hはあくまで、シックハウス対策です。二酸化炭素濃度ではありません。

必要な換気量は何帖に何人で寝るかという家族構成や間取り、生活スタイルで変わります。そのため、施主が住んだ後で二酸化炭素濃度を測り改善するしかありません。

この記事を書いていて思うのは、やはり外気温等の環境や現場の施工レベルに左右されずに計画換気ができる1種換気がいいなぁということです。10年経ったらロスナイにリフォームするのがありかもしれません。ロスナイの取り付けにはφ120の穴が必要なので、自然給気口のφ100はそのままでは利用できないのがネックですが。。

 

 

e-tonbo.hatenablog.jp