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効率重視のエアコン選び方 小さい畳数用のエアコンでも問題ない?

 

前回からの続き

この記事は、「エアコンの選び方と部屋の広さ 18畳の部屋には18畳用エアコンは必要ない⁈ 」の続きです。

e-tonbo.hatenablog.jp

効率重視のエアコン畳数計算

さて上の記事の内容と同じ事をしても面白くありませんので、ここでは少し他とは違った条件で適正なエアコン能力を計算してみます。それは効率重視です。立ち上がりは無視して考えます。

エアコン暖房は定格の5割が高効率

エアコンが効率的に動くのは定格の8割というのを様々なところで見ます。しかし、どうやらこれは古い情報のようです。以下の工務店ではエアコン定格の半分が効率が良い点として計算しているようです。また、「エコハウスのウソ2」にもエアコン定格の5割が最も効率的という記載があるようです。

arbre-d.sakura.ne.jp

 

その根拠となる論文を色々と調べました。無料で確認できるものは以下の論文が該当しそうです。

http://tkkankyo.eng.niigata-u.ac.jp/data/hokurikusibu/sibukogai_cop_2_2015.pdf

 

出力kWとCOPの関係<暖房定格5.0kW 冷房定格4.0kW>

上のグラフは論文より引用しました。横軸が出力で単位はkWです。暖房定格5.0kW、冷房定格4.0kWのP社製エアコンを風量自動で動かした時の出力とCOPの関係です。

暖房は定格5.0kWの半分前後で効率が高いことが分かります。定格の8割はむしろ効率が下がっていますね。

冷房は暖房と少し異なり、定格4.0kWの半分以下の時と定格の時が効率が高いようです。

意外と4割程度のノロノロ運転でも効率が高いようです。巷で言われていることと異なりますね。1.0kWでグラフの線が切れているのはこれ以下だとON/OFF運転となるため計測できないからのようです。

注意点としては市場にある全てのエアコンを調べたわけではないようなので、あくまでも傾向ということです。

エアコンの動作を車で例えると

そもそも、エアコンの定格という表記が分かりにくいと思います。というのも車で例えると、最高時速180km定格時速100km最高燃費時速50kmという感じになります。また、その速度と燃費は4人乗りの車で2人が乗った時のテストコースでの計測値という感じです。4人が乗ったり、他に荷物を積んだりすれば数値は変わりますし、テストコースではなく街中を走れば数値とは異なってきます。

なので定格時速100kmとしても、高速も走れますし街中や渋滞でも問題なく走れます。ただし燃費は下がるという話です。

暖房負荷の倍がエアコンの定格となるように選ぶ

では効率重視のエアコンの選び方はどうなるのでしょうか。理想を言うと、冷房と暖房で負荷が異なるので専用機が欲しいところですがそれは一般家庭では厳しい条件です。普通は兼用でしょう。そう考えると、電気代が高くなる暖房時に高効率とするのが良いと考えます。

 

東京の例で考えてみます。条件は以下のように設定しました。

  • 外皮設定:断熱等級4 C値2.0
  • 暖房設定温度:23℃
  • 外気温:5℃(1月の平均気温)
  • 部屋の広さ:18帖のLDK

これで計算すると暖房負荷は1.57kWのようです。6畳用エアコンの6割で10畳用エアコンの4割の値となりました。効率のみを考えると断熱等級4でも畳数の3倍程度が最適解であることがわかります。暖房負荷の計算には下記のサイトのツールを使用しました。

www.2x6satoru.com

この計算で肝心なのが、室内の設定温度と外気の温度をいくつで計算するかです。畳数表示の計算では設定温度は20℃とされることが多いようですが、これだと少し寒いので23℃としました。その分暖房負荷は増えます。

外気の計算条件は、1月か2月の平均気温で計算するのが良いと考えました。年間の最低気温で計算すると、寒波が来た時以外は暖房負荷が軽くなりエアコンがON/OFF運転となってしまい、効率的に動かすことができません。そのため、暖房負荷がそこそこ高くかつ発生頻度が高い1月や2月の平均気温が適切と考えます。

冬季全体の平均気温で計算しないのは、外気温が高いとエアコンの効率は高くなりますし、そもそも暖房にパワーが必要ないため電気代も抑えられます。外気がある程度低くパワーが必要となる条件で効率よくするのが妥当と考えます。

(※気温を正弦波と仮定すると実効値となる気温にするのが良いとも考えられます。ただそれだと、エアコンを使用しない時期を含んでの実効値となるので年間の最高気温と最低気温の正弦波として実効値を算出し、その値から-1~-2するのが良いと考えます。それを計算すると、大体1月とか2月の平均気温と近い値になるので真冬の平均気温で計算するのが良いと結論付けました。)

低温動作能力の確認

いくら効率重視とはいえ、数年に一度の寒波等で部屋が温まらないのは問題です。なので、最低気温でも動作するかの確認は必要です。以下の条件で計算してみます。

  • 外皮設定:断熱等級4 C値2.0
  • 暖房設定温度:23℃
  • 外気温:-2℃(年間の最低気温)
  • 部屋の広さ:18帖のLDK

これで計算すると暖房負荷は2.12kWです。6畳用エアコンのベーシックモデルでは「低温時暖房能力」が2.8kWぐらいですので3割くらいのマージンがあるので大丈夫そうです。

立ち上がりを考慮すると?

さて上で散々計算した条件というのは室温を一定に保つ時の暖房負荷です。これが冷え切った部屋を23℃まで温めるにはもっと大きな暖房負荷となります。「SHASE-S 112-2009」の規格によると、2時間程度で部屋を暖めたいなら一定に保つ時の暖房負荷の2倍としています。1時間程度ならば4倍で、30分程度なら5倍となります。

上で計算した暖房負荷を2倍にすると以下のような結果です。

  • 1月平均気温時:3.14kW
  • 年間最低気温時:4.24kW

ベーシックモデルの6畳用エアコンでは部屋の温度を一定に保てても、冷えた部屋を2時間以内に温めることは出来ないことが分かりました。ハイエンドモデルであれば、「低温時暖房能力」が4.5kW程度なのでギリギリ行けそうですが、素直に10畳用エアコンや、早く部屋を温めたいなら14畳用エアコンにした方が良さそうです。

断熱等級4の18帖の部屋ならば立ち上がりを無視して効率重視で6畳用、立ち上がりを考慮すると10畳用という結果になりました。

これが断熱等級5になると計算過程は省略しますが、効率重視で6畳用、立ち上がりを考慮しても6畳用(ハイエンドモデルのみ)となります。

 

エアコンは6畳、10畳、14畳から選ぶ

上で少し疑問が発生したかと思います。6畳用で足りないなら8畳用にするのが順当では?と。それには理由があって、家庭用エアコンは大きく分けて3つのクラスがあります。

  • 低出力:6畳用と8畳用
  • 中出力:10畳用と12畳用
  • 高出力:14畳用以上

詳しくは以下の動画を見てください。

m.youtube.com

自分も最初はホントかいなと思いました。

メーカーのカタログを見ると確かにその傾向がありました。自分が着目したのは、室外機の大きさと重さです。エアコンの本体は実は室外機です。こっちがメインなんですね。

仕様を見てみると、確かに異クラス間では室外機のサイズが異なりますが、同クラス内であれば室外機のサイズは同じことが多いです。

ただ同クラス間でも、重さが少しだけ異なります。放熱フィンのサイズぐらいが違うのかもしれませんが、ハードウェアは殆ど同じと考えられます。メーカーによっては、8畳用が中出力のクラスのこともありました。

同クラス内であれば、容量が一番小さいのが金額的にお得なので上記の畳数のエアコンから選ぶのが良いという話です。